新海誠監督最新作「天気の子」を見て(ネタバレあり)
君の名は。から天気の子へ。
(物語の核心に触れるネタバレがあります)
ネタバレなし感想はこちら
いつも新海作品のテーマの根底には「届かない距離」がある。
宇宙の果て、初恋、立場、年齢差、時空…
今回は言うならば「社会の障壁」?
帆高も陽菜と凪も、本来社会ではいてはならない状況にいる「少年」。大人はもちろんそれを引き剥がそうとする。二人はそれに抗おうとする…という距離が描かれているのではないだろうか。
実際、ラストでは「青年」に成長した帆高が陽菜と再会を果たす。
また、人柱としての「運命」という距離も。人柱となって雨を止ませた(天に昇る=死後の世界)陽菜を帆高が助けに行く「生死」の距離もあるかもしれないが、少し要素が薄い気もする。
Twitterとかで勘違いしている人が多いので序盤に書いておきますが、2019年時点で瀧と三葉は出会っていません。
苗字が違って当たり前。離婚どころか結婚もしてません。
君の名は。のラストシーンは2021年なのであと2年ですね。
つまりテッシーとサヤちんもまだ結婚していません。
というより君の名は。のラストは水没してないので天気の子はパラレルワールドです。エヴェレットの多世界解釈。五次元にからかわれるやつです。
ここからはネタバレなし感想で挙げたいくつかの点について。
まずいい意味でも悪い意味でも今までの新海作品っぽくないという点について。
君の名は。は明確なハッピーエンドとして描かれてあったが、今までの新海作品は最終的にどちらかというと報われないラストの作品が多い。
ただし、今作は普通に再会を果たしているという点が「今後の作品はこういう流れになるのか…」と少し残念に思った。しかしこんな心配は杞憂に終わりました。
ただ、会えたことの代償が、海に帰した東京と降り続ける雨。そこで生きて行く人達。
果たしてこの世界はハッピーなのか。
「愛する人との再会とその代償」が明確に提示された点が逆に面白い点だと感じた。というか狂っている。
君の名は。の後にこんなもの普通作れないでしょ
たとえ会えたとしても代償に何かを失う。
これが君の名は。への「糸守が壊滅しているのに何事もなく終わる」という批判に対する答えなのだろう。
本当にとんでもないもの作っちゃったよこの人…
また、主人公の「世界が変わってしまおうとも自分の想いを叶えたい」という行動原理は今までの新海作品の主人公にはいなかった。
さらにこの主人公は決して善人ではないし優等生でもない。一言で言うと犯罪者。警察に終われる身の主人公という点。
あとヒロインが歳下に設定されてるのも初めて。ただ立ち振る舞いと接し方はあくまでも18歳だけど
また、現代の暗いような部分がメインとなって描かれている。綺麗な世界ではなく、食べ物はファストフードばかり、警察、銃、キャバクラ、ラブホテル…今までの新海作品ではあまり描かれなかった世界がこの作品に集約されている。
こういった今までの作品には無かった点がまた映画の世界観を深くさせている。
こんなに殴られる主人公もなかなかいないしなかなかアウトローな登場人物が多いのもまた今までにない感じがした。
続いて構成について。
前作も1:2:1で分割できた(OP~前前前世~彗星落下〜ED)が、今回もある程度分割できる。所謂序破急の三幕構成。
- セクション1
OPから祝祭(晴れ女バイト)まで。
- セクション2
~帆高が線路を走るシーン。(ちなみに2-1と2-2の2つに分けると陽菜の腕が透けているのが発覚するシーンで30分になる)
- セクション3
代々木の廃ビル〜ED。
このラスト4~50分涙止まらなかった。
走るシーンの回想とみんなの協力も涙どばどば。エグかった。グランドエスケープのあの流れ方もめちゃくちゃよかった。そこから海に沈んだところは急展開すぎて?!ってなったけど
というよりサヤちんとテッシー出てきた時点で思考が停止した。
瀧くんめちゃくちゃ出てくるし三葉も出てくるし
1回目じゃ四葉見つからなかった……
※追記
2回目で見つけました。ラブホで確保された帆高が外に出る流れの次、人々が青空を眺める(高層マンションのバルコニーから空を観るカットの次)シーンにいます。セリフは「なんか、涙出てくるね。」数秒なのでお見逃し無く。
というより瀧くんはお父さんと同居してないのね、もしかしたら夏休みで来てるのかもしれない
父方の祖母って感じ?
あーあと凪くんですね
まさか最初見た時はキーキャラだとは思わなかった
あのキリッとした顔と声で小学生なギャップ可愛すぎる!!!!!!!
途中から先輩って普通に呼ばれてるのウケるし元カノもいるし
てか女装!!!!!!!!!!一瞬だけどどちゃくそに可愛かったほんとにやばい
陽菜ちゃんもかわいいしあそこ2人とも可愛いとかそりゃあ児相にも目付けられるわ
てか本当にPG12じゃなくていいんですか?謎の透けがあるとはいえおっぱいが…
てかそもそも言ってないけど泊まってるのラブホだし触れられないだけで結構深い世界にいるんだよね、須賀もなかなかやべーやつだし
あと夏美さん高校生誘惑しすぎでしょ
ギャグパートのテンポの良さはなかなかよかった
最初のネカフェや公園、傘とてるてる坊主とか
Yahoo知恵袋のクソ回答の付き方は再現度高すぎて笑った
求人バニラまで出すとか大丈夫なんですか?
あと細かい点だと銃声が大きすぎないところとかビックリしなくてよかった
あと風たちの声の途中の気象部の人だけすごい棒読み感があって違和感あった…もしかしてこれ荒木健太郎さん?
陽菜は可愛かった!あそこの2人可愛すぎだろほんと
ラストシーン、個人的にはアリだと思う
先述した世界を変えてしまっても自分の想いを叶えたいという行動原理、パンフのインタビューでも書かれているけど帆高と社会は全く逆の選択を望んでいるからこそ、仲間が増えた時に世界が広がった感じがする
というより、ストーリーが完全にセカイ系のそれなんですよね
この2人を中心にして世界が変わっている感じ
安井刑事をはじめとする警察は立ちはだかる障壁のように描写されているが、普通に考えると何も間違ったことはしてないしすぐ取り逃すけど、二人が中心だからこそ立ちはだかるように見える。
大丈夫の歌詞なんかはセカイ系全開で、陽菜が世界、つまり東京の天気を左右するのを知ってるのは帆高だけ…あーもうすごくエモい
また、グランドエスケープで
「怖くないわけない でも止まんない ピンチの先回りしたって 僕らじゃしょうがない」
って歌われてるように、常にその時の感情で起こし続けた行動の帰結がこれで、それでも陽菜がいるならそれでいい……なんてロマンありまくりじゃないですか!キュンキュンしちゃう。ボーイミーツガールモノとしては最高すぎるオチ。帆高くんが雲上から陽菜を連れ帰るシーンとかもう最高すぎる。こういう恋をしてみたかった。天気を操れる人、ぜひご一報ください(は?)
最初は晴れを望んでいたのに、見終わるといっそこのまま降り続いても構わないとさえ思えるような気分です。
個人的には面白い!!と思いましたが賛否がとにかく分かれそうな気がします。特にラストシーン。街を沈めて見かけはハッピーエンドなんだからもう意味がわからない
あと君の名は。とは対称的な世界観も。
叩きたかったら叩けば?みたいな開き直ったストーリーを君の名は。の後にぶちかましてくる監督は本当に狂ってる。世界以上に狂ってる。四葉もヤバいヤバい言いながら出ていくレベル。
見終わった後はもう涙どばどばでラストの情報量も多すぎて何も考えられなかったんですけど、ちょっと間を置いて思い返すと意図に気づいて…ほんと後を引く内容の作品だと思います。スルメ。
そのうち小ネタ集記事も書きます。
また君の名は。みたいに何十回も見に行くことになりそうです。
最後に心に刺さった須賀の強烈な一言を引用して終わりにします。
「世界なんてさ、どうせもともと狂ってんだから」
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